正味現在価値(NPV)の合理性と実務上の留意点を考える

ファイナンスの基礎となる現在価値、将来価値に換算すれば、時間軸が異なるお金も同じ土俵で評価することができます。参考『「現在価値」と「将来価値」の合理性を考える

事業投資や企業買収の場でも使われている合理的手法です。

ある新規事業(以下、案件A)で初期投資額が300万円、将来キャッシュフローが下表と見込まれる場合、採用か棄却をどのように判断すればよいでしょうか?

期間(m) 将来キャッシュフロー(a)
初期投資額  -3,000,000
700,000
700,000
700,000
700,000
700,000

キャッシュフローとは、各期のキャッシュイン(お金の流入)とキャッシュアウト(お金の流出)の流れを意味します。各期毎にインとアウトを合算した流れをネットキャッシュフローと呼びます。

将来キャッシュフローのままでは時間軸が異なるので、初期投資額(300万円)との比較をするため、現在価値に換算します。将来キャッシュフローの現在価値は正味現在価値(Net Present Value:NPV)といいます。

ここでポイントになるのが、割引率です。

割引率はリスクの大きさによって変わります。案件Aでいえば、リスク=将来キャッシュフローの変動になります。

当然、リスクが大きいと判断すれば現在価値は小さく(投資できる可能性は低く)なり、リスクが小さいと判断すれば現在価値は大きく(投資できる可能性は高く)なります。

たとえば、5年間で3%の利回りが確実に得られる投資案件(国の保証付でリスクゼロ)があるとします。案件Aは民間同士の事業で不確実性は国より大きいので少なくとも3%の利回りを超えたいと考えるのが普通です。

仮に3%で割引くとどうなるでしょうか?

期間(m) 将来キャッシュフロー(a) 3%の現在価値係数(b) 各期の現在価値(a×b)
初期投資額  -3,000,000  1.00 -3,000,000 
700,000 0.97 679,000 
700,000 0.94 658,000 
700,000 0.92 644,000 
700,000 0.89 623,000 
700,000 0.86 602,000 

右端の列を合計すると、206,000円(20.6万円)となり、利回り3%は超えます。

利回りを3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%と大きくすると(リスクを上げると)、

3.5%:157,000(15.7万円)
4.0%:108,000(10.8万円)
4.5%:80,000(8万円)
5.0%:24,000(2.4万円)
5.5%:-4,000(-0.4万円)
6.0%:-53,000(-5.3万円)

となります。

5%と5.5%の利回りの間に300万円を超える割引率があります。言い換えると、3%超から5.5%弱までの2%強がリスクと考えることができます(投資額を回収できないなら即棄却が一般的です)。

他にも案件Aと似た案件Bの利回りが5.5%の過去実績があったとすると、案件Aも同水準の利回りは確保したいとなり、棄却と考えることもあります。

このようにしてリスクを考えながら採用か棄却かの判断をすることになります。尚、リスク評価には複数の考え方があり画一的に決められないのも事実です。

また、リスク以外にも案件Aを実行るために金融機関から資金調達をするのであれば、その分のコストを加味した割引率にする必要があり、株式会社であれば、株主から要求される利回り(配当など)を加味する必要もあります。

実際に案件Aの採用と棄却を検討する際には、

  • 案件Aを獲得すれば、クライアントからの次期案件に結びつく可能性がある。
  • 案件Aの特性を熟知しており、将来キャッシュフローの実現性が高い。
  • 案件Aを足がかりに事業領域を広げる目的のため、高リターンは求めない。

などの多角的な視点が必要になります。とはいえ、正味現在価値(NPV)が重要な数値には変わりません。

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